2012年2月アーカイブ

 2008年に、『源氏物語』は(記録上での確認において)生誕1000年を迎えました。京都を中心に「源氏物語千年紀」の催しがあり、私も源氏ゆかりの各地で、“心なき身”ながら、様々な思いを巡らせました。宇治市にある、リニューアルされた「源氏物語ミュージアム」も、当時大変な観光客で賑わっていたことを記憶しています。さらに2011年12月、生田斗真氏主演で「源氏物語 千年の謎」が公開されました。NHKの大河ドラマでも『源氏物語』の一節が引用されるなど、ここ数年『源氏物語』の人気が再燃しているように感じています。

  さて、高校で古典を学ぶというと、活用だ、助動詞だ、重要語句だなどと、ややこしい文法事項がたくさん出てきます。これが、“古典が苦手”という人を増やしている原因の一つでしょう。たしかに、大学受験で合格するには、文法の学習は必須です。文法問題に限らず、現代語訳に必要な知識となることも多い。しかし、文法に従って訳し、問題で求められた解答をまとめることだけでは、本当の意味で古典を理解しているわけではないでしょう。学習の意味も分からず、ただ文法に従って現代語訳していれば、嫌になる人が多くなるのは必然でしょう。

  他教科でも同じことだと思いますが、生徒が授業や本文へ自発的に取り組むことが重要です。その一端として、私は2年前から『源氏物語』「若紫」の一節を、グループで劇を演じさせる授業を実施しています。「小学生じゃあるまいし、高校生が劇なんて……」そうお考えになる方がいらっしゃっても不思議ではありません。しかし、私の狙いは劇や演技そのものではないのです。

 ①     古典が苦手な生徒も、他の生徒と一緒に学習できる。授業に積極的に取り組める

②     訳すのではなく、文全体を一連の流れとしてとらえる。台本を作る感じになる。

③     印象に残りやすい。

④     自分の役に感情移入できるため、登場人物の細かい心情が体感できる。

⑤     他グループを見て、本文の内容を精査できる。

  もちろんすべてのグループがすべての項目を満たせるわけではありません。しかし、未だかつて寝ている生徒はもちろん、まったく授業についていけない生徒は一人もいなくなりました。さらに、先に述べた映画を観に行ったとか、内容について日常で話してくる(担任を務めるクラス)など、彼女たちなりに『源氏物語』の面白さを実感してくれているようです。1000年前の作品が、時代を超えて現代に蘇る。そこから学ぶことは、1000年前の貴族文化や風習でしょうか、それとも人間の本質でしょうか……

 以下の2枚の写真は、実演する前の打ち合わせをしている授業風景(上)と、当日浴衣を用意した班が着付けをしているところ(下)です。

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 グローバル化の進む中、日本人女性の進出は目覚しく、今後ますますの活躍が期待されます。そうすると、英語の学習や時事・世界情勢を知ることは必要不可欠です。しかしながら、いくら英語が堪能であっても、例えば外国人に自国のことを質問されて、納得のいくように答えられる人はどのくらいいることでしょうか。『源氏物語』に限らず、自国の文化や歴史もまともに理解しようとせず、ただ他国の文化や言語の学習にいそしんでいるようでは、国際人として認めてもらえないかもしれません。

 日本の文化や歴史について、文面や訳の暗記ではなく、生徒達の血肉となるような授業を。そして、これからのグローバルな世の中を日本人として活躍してほしい。一国語教師としては壮大な目標ですが、生徒が“『源氏物語』の作者は紫式部で主人公は光源氏”で終わってしまう学習にならないように、毎日の授業に取り組んでいます。

 国語科 K・T