待つ楽しみ

先日、ある作家についての対談を聞く機会があった。

興味深い話が続くなか、聞いていた30代から70代くらいまでの十数名みんながいっせいに大きくうなずく場面があった。

対談者は学生の頃に、この作家の小説を順番に読んでいったが、どの書店に行ってもどうしても見つからない本が4冊あった。面白いと評判の本なのに読むことができない。「もう、飢餓状態だった」と。

確かに、以前は読みたくても手に入らない本があった。今はインターネットですぐに購入できたり、公共図書館の本が自宅で検索できたりして、本を探すために無駄足を踏むことも少なくなった。そのかわり、本を手に取ることができたときの感激や期待も小さくなってしまったような気がする。今の子どもたちは、かわいそうだな、と思って考え直した。

「『君の膵臓を食べたい』もう一ヶ月も待ってるのに返さないの誰ですか!」

「なんでこのシリーズ、おもしろいのに1巻しかないんですか?」

「この間、本屋さんで続きを見かけたんですけど図書室にも入りますよね?」

図書室ではこんな声が聞かれる。本を待つ楽しみはまだまだ残っていそうだ。